増大特集 細胞表面受容体
●構造的特徴:1回膜貫通型◆受容体の遺伝子:NTRK
神経栄養因子受容体TrkBと神経可塑性
青木 誠
1
Aoki Makoto
1
1理化学研究所 脳科学総合研究センター 発生遺伝子制御研究チーム
pp.502-503
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101536
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神経栄養因子の研究はレヴィモンタルチーニらがNGF(nerve growth factor)を同定することによって始まった。それ以後,NGFのほかBDNF(brain derived neurotrophic factor),NT-3,NT-4がこれまでに同定された。神経栄養因子は受容体Trkに細胞表面で結合してシグナル伝達を引き起こす。発生過程で神経栄養因子は神経細胞の生存,軸索の伸張,樹状突起の形成を促進し神経回路網の形成を行う。成体においてもTrkは海馬や脳室下領域において神経幹細胞の増殖や生存を促進することが報告されている。Trkは神経回路形成における役割の他に,シナプス伝達効率を調節することが知られている。成体の脳神経系では大きな神経回路の再編は起こらず,既存神経回路内でシナプス伝達効率の変化が,シナプスの構造に変化を与え,より強固なシナプス結合へと変化する。シナプスの可塑性と呼ばれるこの過程は成体の脳が学習や記憶を形成する際のメカニズムと考えられている。本稿ではBDNF-Trkシグナリングが神経活動によって惹起され,シナプスの形状に影響を与えることについて概説する。
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