特集 現代医学・生物学の仮説・学説
2.分子生物・遺伝学
ヒトゲノムの進化
植田 信太郎
1
1東京大学理学系研究科人類学專攻
pp.474-475
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900613
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概説
形態の比較を中心とした分類学研究により,ヒトは脊索動物門・哺乳綱・霊長目・真猿亜目・狹鼻類下目・ヒト上科・ヒト科の中に分類されている。現生霊長類は約200種ほど存在するとされているが,このうち類人猿とよばれる霊長類はチンパンジー・ゴリラ・オランウータン・テナガザルである。この前3者でオランウータン科(ショウジョウ科)を,後者でテナガザル科をなす。これに対し,ヒトは1種だけで1属1科を形成し,これらの3つの科でヒト上科を構成している。
ところで,ヒト・ゲノムはおよそ30億塩基対,重量にして約3ピコグラムである。霊長類各種のゲノムDNA量を比較してみると,アジルテナガザルの2.4ピコグラムからフィリピンメガネザルの4.6ピコグラムまで若干のばらつきがみられる。大型類人猿においては,ヒトとほぼ同じ3.1-3.5ピコグラムの値が示されている。染色体数は原猿に属するイタチキツネザルや新世界ザルのエリマキティティにおける20本からメガネザル科の80本までの広い範囲にあるが,大部分は染色体数42~48の間におさまる。ヒトでは22対の常染色体と2本の性染色体の計46本の染色体からなるのに対し,チンパンジー・ゴリラ・オランウータンといった大型類人猿では48本である。染色体バンドを比較すると,大型類人猿の染色体2本をあわせるとヒトの第2番染色体にうまく対応する。
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