特集 現代医学・生物学の仮説・学説
1.細胞生物学
細胞質分裂
馬渕 一誠
1
1東大学教養学部生物学教室
pp.426-429
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900597
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概説
動物細胞は紡錘体のちょうど真ん中にあたる表層がくびれて分裂する。この現象は顕微鏡でよくみえる現象であるので古くから研究されている。しかし,なぜ紡錘体の真ん中でくびれるかはまだわかっていない。くびれ(分裂溝)の進行の機構の研究はそれに比べて進歩があった。1968年から1973年までの間に,いろいろな種類の細胞で分裂溝部分の細胞膜直下にアクチン繊維が平行に並んで細胞を取り巻く構造(収縮環)が発見された(図1)。最近ではこの構造は動物細胞に限らず、細胞性粘菌,単細胞藻類,分裂酵母でも観察されている。蛍光抗体法により,分裂溝部分にはミオシンも集まっていることがわかった。ヒトデ卵に卵ミオシンの抗体を注入すると核分裂は影響を受けなかったが,細胞質分裂は阻害されたのでアクチン-ミオシン相互作用が分裂溝の進行の原動力であることがわかった(Mabuchi & Okuno,1977)。また細胞性粘菌でミオシン遺伝子を破壊したり,アンチセンスDNAを導入したりしてミオシンの発現を抑えると細胞質分裂がおこらないことも報告された(DeLozanne & Spudich,1987;Knecht & Loomis,1987)。
一方,分裂溝がどのようにして正しい位置に形成されるのかについては,いくつかのみごとな生理学的実驗がある。
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