Japanese
English
特集 細胞分裂をめぐって
細胞質分裂におけるカルシウム変動
Cyclic changes of free calcium levels with the cycle of cytokinesis
吉本 康明
1
,
岩松 鷹司
2
,
平本 幸男
3,4
Yasuaki Yoshimoto
1
,
Takashi Iwamatsu
2
,
Yukio Hiramoto
3,4
1基礎生物学研究所細胞増殖部門
2愛知教育大学教育学部生物学教室
3東京工業大学理学部生物学教室
4基礎生物学研究所細胞増殖部門
pp.499-503
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904803
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卵の成熟,受精,卵割において細胞内Ca2+は重要な役割を担っていると考えられている。とくに受精の際のCa2+の変動はメダカやウニ,ヒトデなどの卵で比較的よく研究されている。これらの卵においては受精の際,Ca2+濃度の一過性の増加現象が観察されるが,これは卵の発生開始の引金の一つと考えられている。しかし,この後卵割に至るまでのCa2+の挙動はよくわかっていない。とくに卵割の際のCa2+の挙動は興味深いものであるが,一般に卵割や細胞分裂におけるCa2+濃度の変化を研究した例は少ない。
BakerとWarner1)はアフリカツメガエルの卵で,第一,第二卵割の際にわずかなCa2+レベルの増加を観察しているが,一方でRinkら2)は同じ材料で目立ったCa2+変化はないと報告している。メダカ卵においてはRidgwayら3)が第一,第二卵割における微小なCa2+パルスを観察している。また,ごく最近Poenieら4)はウニ卵において,前核の移動期,核膜の消失する時期,分裂前期から後期への転換期,第一卵割時にそれぞれCa2+濃度の上昇が見られると報告している。植物ではWolniakら5)がマユハケオモトの胚乳細胞を用いて,膜系に結合したCa量が分裂後期の直前に減少することを観察し,この時期に分裂装置内のCa2+濃度が上昇すると推定した。
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