Japanese
English
特集 睡眠と脳回路の可塑性
睡眠とシナプス可塑性との相互作用
Reciprocal interaction of sleep and synaptic plasticity
宮本 浩行
1
,
ヘンシュ 貴雄
1
Hiroyuki Miyamoto
1
,
Takao Hensch
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター神経回路発達研究チーム
pp.260-268
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100853
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
基本的な生理的欲求としての食欲,性欲,排泄欲などに比して睡眠についてはなぜそれが大切なのか自明とは言いがたい。脳との関係,なかでも睡眠と記憶との結び付きは近年の研究の進展も相まって注目されてきた。記憶は認知機能の基礎をなすものであり,ヒト・動物の心理学的研究,神経活動,シナプス可塑性,分子など多彩な観点から実験的にアプローチできる点や,記憶現象が内包する脳システム間の動的相互作用が研究者を魅入らせてきた理由ではないだろうか。
睡眠がシナプス可塑性や記憶の固定・定着(consolidation)に積極的な役割を果たしているという考えを多くの実験的研究は支持している。シナプス可塑性とは広く神経細胞間の情報伝達の強さを変え維持する性質であり,神経活動によって神経細胞間の結合強度が変化して保存されるという特性から記憶・学習機構の基礎過程と想定されている。代表的なものに長期増強(long-term potentiation:LTP)や長期抑圧(long-term depression:LTD)が挙げられ,海馬,小脳,大脳皮質,線条体といった様々な脳領域の脳切片あるいは生体で詳しく調べられている。
Copyright © 2009, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.