特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅰ.上皮細胞株
消化器系上皮細胞
肝細胞
ラット肝癌:H4-Ⅱ-E
松田 広一
1
1徳島大学酵素科学研究センター酵素病理学部門
pp.386
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900392
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■樹立の経緯
肝癌細胞のin vivoにおける酵素誘導(基質誘導,生成物抑制,ホルモン誘導,食道誘導,グルコース抑制など)の機構はよく研究されてきたが,より詳細な研究のためには系を単純化したin vitroでの実験系確立が是非とも必要であった。しかし高度な肝機能を維持した株化細胞は少なく,しかも十分な酵素誘導を示すものは稀有であった。そこでこのような目的に適合するものとして樹立されたのが本細胞株である。
1960年,Reuberは雄A×CラットをN-2-フルオレニルジアセトアミド添加飼料で4週間飼育し,次いで標準飼料にて10ヵ月間飼育した。この後,浸潤性の原発性肝癌組織を摘出して雄A×Cラットの皮下に移植し,次いで雌A×Cラットに再移植して胆汁栓を認める腫瘍細胞(H-35細胞)を得た。1961年8月,MorseはH-35細胞を20%ウマ血清および5%ウシ胚血清添加イーグル培地で5代継代培養し(H-4),再度A×Cラットに移植してH-35細胞様の腫瘍巣を形成する細胞(H4-Ⅱ)を得た。ディッシュ上で2回継代した後,線維芽細胞層の上に形成された上皮細胞性コロニーを拾い,さらに3度クローニングを繰り返して線維芽細胞の混入がない単一クローン(H4-Ⅱ-E-C3)を得てH4-Ⅱ-E細胞と名付けた。
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