Japanese
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特集 脳と免疫
臨床的にみた中枢神経系の自己免疫疾患
Clinical view of autoimmune diseases of the central nervous system
高 昌星
1
,
柳澤 信夫
1
Shosei Koh
1
,
Nobuo Yanagisawa
1
1信州大学医学部第3内科学教室
pp.40-43
発行日 1991年2月15日
Published Date 1991/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900165
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免疫は外界からの病原体に対する宿主の防御反応であるのみならず,生体を制御するシステムであり,生体では常に「自己」と「非自己」認識が行われている。中枢神経系には元来リンパ系組織が欠如しており,さらに血液脳関門の存在でも知られるように,脳は一種の隔絶抗原とされており,通常の状態では脳物質がリンパ網内系に接することはなく,免疫学的barrierがあるといえる。一方こうしたbarrierにより隔絶された中枢神経系ではあるが,脳物質そのものの抗原性は強く,いったん感作された場合には強い自己免疫反応を示すことは古くから知られている1,2)。ワクチン免疫や感染症の後に中枢神経系の自己免疫疾患が惹起されることは,ワクチン接種後脳脊髄炎や感染後脳脊髄炎として有名である。
多発性硬化症はヒトの中枢性脱髄性疾患の代表であり,髄鞘が一次的におかされ,軸索のよく保たれることが特徴とされる。その病因は現在なお不明で,仮説として,①ウイルス感染症,②自己免疫疾患,③その両者の合併が提唱されてきたが,中枢神経系の自己免疫疾患であるという説が,現在もっとも支配的である。本稿では中枢神経系の自己免疫疾患としての脱髄性疾患の自己免疫現象3)につき臨床的側面を中心に述べる。表1に中枢神経系の自己免疫疾患の概要を示した。
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