特集 注目の実験モデル動物
特集によせて―「生体の科学」編集室
野々村 禎昭
pp.538
発行日 1990年12月15日
Published Date 1990/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900141
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疾病との闘いは,まず疾病の病因の解明を目指すことからはじまる。疾病そのものにアプローチするためには患者自身の協力による材料の提供なくしては病因の解明は進まない。必要な材料として疾病原因臓器を用いた病理組織学,生化学的分析,生理学的測定,などが欠かせない。しかしこれらはあくまで病的材料の追求であり,これに対する正常材料のコントロール研究が必要となる。病理,組織学的研究では生検材料が少量ですむため,材料を得ることが可能な場合もあるが,生化学的材料はかなりの量が必要のため,不可能な場合が多い。その上患者自身には傷んでいる臓器であり,現在の時点で生検材料を患者からとることは,患者に苦痛を与えるだけであり,治療にはまったく関係なく,長い目でみればこの疾病解明のために行っているとは言え,研究者の側からもつらいところである。その上コントロールについても正常人からの材料とはいえ容易に得られるわけではない。一方,採血で得られた白血球を培養して増やし,そこから遺伝子DNAを得て,その解析によって研究ができる遺伝子疾患の研究が進んだのも,材料の得やすさによるのであろう。
このような困難さを乗り切るために疾病実験動物が求められることになる。実験動物にはある操作(外科的操作が多い)を加えて疾患状態を作り出すものもあるが,系統化した遺伝性疾患動物が得られれば研究を進めるのに非常に便利であり,そのようなものが求められてきた。
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