Japanese
English
特集 LTPとLTD:その分子機構
LTDの分子メカニズム:一酸化窒素の役割
Mechanisms of long-term depression : Role of nitric oxide
渋木 克栄
1
,
岡田 大助
1
Katsuei Shibuki
1
,
Daisuke Okada
1
1理化学研究所国際フロンティア研究システム思考ネットワーク研究チーム
pp.468-472
発行日 1990年10月15日
Published Date 1990/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900130
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一酸化窒素(NO)という,あまり生理学とは縁のなさそうな物質が近年われわれの注目をあびるに至ったのは,NOが血管内皮細胞由来の弛緩因子(EDRF)の一つに他ならないというMoncadaらの報告による1)。さらに小脳細胞からもNOの発生がみられるとのGarthwaiteらの報告2)によって,興味は中枢神経系におけるNOの役割へと広がってきた。というのもNOはガスであり,組織内を素早く拡散して細胞膜も自由に通過するので,当初から細胞間メッセンジャーとしての機能が考えられていたからである。とくに細胞間の情報交換を通して成り立つシナプスの可塑的変化にNOが関与するかも知れないという期待があった3)。
NOの作用の一つは,可溶性のグアニレートサイクラーゼを活性化することである。小脳におけるNOの発生もcGMP産生をメルクマールとして捉えられた2)。ちなみに小脳では他の脳部位と比較して高濃度のcGMPが存在する4)。さらにこのcGMPは登上線維を刺激すると高まることが知られている5)。
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