Japanese
English
特集 意識
Ⅱ.動物を対象とした実験的アプローチ
意識の起源と進化
The origins and evolution of consciousness
鈴木 大地
1
Suzuki Daichi G.
1
1筑波大学生命環境系
キーワード:
神経生物学的自然主義
,
無制約連合学習
,
意識の進化生物学
,
人間中心主義
,
擬人主義
Keyword:
神経生物学的自然主義
,
無制約連合学習
,
意識の進化生物学
,
人間中心主義
,
擬人主義
pp.34-37
発行日 2022年2月15日
Published Date 2022/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201461
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人類は古来より,自分たちは“特別”で,他の生物より“高等”であると考える傾向にある。このように人間を特別視し,物事の中心に据えて考える立場を人間中心主義と呼ぶ。しかし,進化生物学に基づけば,われわれヒトは,何十億年にもわたって盲目的に枝分かれを繰り返してきた生命の樹の一枝に過ぎず,クリスマスツリーの樹頂に輝く星のごとく,生命の樹の頂点に君臨しているわけではない。各々の生物はヒトと同じ時間をかけて独自の進化を遂げてきた。ヒトは“特別”でも“高等”でもないのである。
以上の前提に立てば,われわれの意識もまた進化の産物であり,ヒト以外の動物にも意識があるのではないかと考えるのは自然な発想である(本稿での“意識”は,もっぱら,意識主体に現れる主観的世界を経験する意識,すなわち現象的意識を指す)。にもかかわらず,意識を進化の観点から解明しようとする本格的な試みは,ごく最近になってやっと始まったばかりである。その背景には,様々な動物種を対象とする比較認知科学の成果や,澄江動物群の発見をはじめとする古生物学の進展,遺伝子情報を利用した系統推定,発生メカニズムの比較により詳細な形態進化の分析を可能にした進化発生学の勃興などがある。
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