Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
動物の発達期に脳の神経回路が正確に形成されることで,動物が環境を知覚する,行動する,知性を持つことなどの脳機能が備わる。脳機能の基になる神経回路がどのように形成されるか,その原理を解明することは興味深いテーマであり,発達障害の病態解明・治療法開発ならびに人工知能の開発に貢献する。生まれたばかりの動物の神経回路は未熟であり,動物の機能もほとんど備わっていない。生後発達期に脳の神経回路は精緻化され,脳機能が発現する。この細胞レベルでの変化として,“シナプス刈り込み”と呼ばれる現象がある。シナプス刈り込みにおいて,一部のシナプス(神経細胞同士の結合)が強められて残存し,残りの余剰シナプスは弱められて最終的に除去される1)。この過程は未熟な神経回路を機能的な成熟した神経回路に変化させるために重要であると考えられている2,3)。
発達期小脳の登上線維-プルキンエ細胞シナプスはシナプス刈り込みを研究するのに適したモデルである4)。成体におけるプルキンエ細胞は平行線維と登上線維の2つの異なる興奮性シナプス入力を受ける5,6)。平行線維は小脳顆粒細胞の軸索で,各平行線維は1つまたは2つのシナプスをプルキンエ細胞樹状突起のスパイン上に形成している。個々のシナプスの入力は弱いが,約10万本以上の平行線維が個々のプルキンエ細胞にシナプス結合している。対照的に,成体のほとんどのプルキンエ細胞は,単一の登上線維から強いシナプス入力を受けている(単一支配)(図1)。各登上線維はプルキンエ細胞の近位樹状突起上に数百個の機能的に強いシナプスを形成している。しかし,生まれてしばらくは,すべてのプルキンエ細胞は複数の登上線維からのシナプス入力を受ける(多重支配)。
Copyright © 2021, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.