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連載講座 新しい光学系を使って広がる顕微鏡の世界−2
広視野多光子照明と光操作—多光子パターン照明
Wide-field multiphoton illumination and optical control: patterned multiphoton illumination
磯部 圭佑
1,2
Isobe Keisuke
1,2
1理化学研究所光量子工学研究センター
2京都大学大学院生命科学研究科先端イメージング学講座
キーワード:
多光子励起
,
光操作
,
パターン照明
Keyword:
多光子励起
,
光操作
,
パターン照明
pp.608-613
発行日 2020年12月15日
Published Date 2020/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201292
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近年,三次元分解能を有する光学顕微鏡を用いた三次元組織のタイムラプスイメージングによって,複雑な生命現象における多細胞の相互作用を観察できるようになってきている。また,観察するだけではなく,細胞間における入出力応答を調べるための光操作技術も近年注目されている。特に,光操作技術としては,チャネルロドプシンを神経細胞に発現させ,光照射で神経発火を操作するようなオプトジェネティクス1)と,励起光をパターン照射する光制御技術2)が重要になっている。本稿では,読者にとってあまり馴染みがないと思われるパターン照明技術について紹介する。
蛍光イメージングでは,空間分解能は励起と検出の両方で決定され,共焦点顕微鏡3)や構造化顕微鏡4)のように,焦点面以外で発生する蛍光の除去や画像処理によって,深さ方向の分解能を得る顕微鏡技術がある。しかし,光操作では,励起における深さ方向の分解能がなければ,深さの異なる非標的細胞を意図せず操作することにつながり,アーティファクトとなる。そのため,非標的細胞を励起しないパターン照明技術が必要である。光操作におけるパターン照明には,光信号処理で培われてきたホログラフィー技術5)が用いられている。ホログラフィー技術では,光の位相を制御することによってパターン照明を行う。しかし,散乱のきつい組織のような試料内部にパターン照明を行うには,ホログラフィー技術だけでは実用化が難しい。実用化するために,ホログラフィー技術に前回の連載講座(71巻2号pp169-173)6)で紹介した時空間集光技術7)を組み合わせる試み8)が行われているので紹介する。
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