Japanese
English
- フリーアクセス
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
細胞は生命現象の機能単位であるが,多数の細胞が集合すると,単なる個々の和を超えた高度な秩序や機能を示す。多細胞の集団挙動のなかで,個々の細胞がいかに相互連絡して細胞集団としての高度な生命現象を制御しているのか,そのしくみはほとんどわかっていない。そのため,細胞間の複雑な相互作用ネットワークを介した生命現象を解明するためのイメージング技術の開発が行われている。マクロ顕微鏡では,試料表面だけではあるが,大脳や小脳全体の三次元(xyt)カルシウムイメージングができるようになっている1)。しかし,xy平面だけでなく,深さ(z)方向にも細胞間の相互作用はあるため2),深部イメージングも行い,1細胞の解像度で大きな培養組織や生体組織を四次元(xyzt)イメージングする必要がある。生体組織の深部まで観察するためには,多光子顕微鏡が有用であるが,レーザー走査を必要とするため,空間分解能,時間分解能,観察領域といったイメージング性能がトレードオフの関係にある。
近年,これらのトレードオフの関係を打破するために,ベッセルビームを用いたボリュームイメージング技術3-5),異なる深さの焦点面を同時にイメージングする時間多重化技術6-8),複数のビームで同じ焦点面の異なる視野を同時にイメージングし,xy平面の視野を広域化する空間多重化技術9)などが提案され,実用化され始めている。ベッセルビームを用いたボリュームイメージングでは,二次元のレーザー走査で,深さ方向の投影像を取得できる。そのため,二次元の画像取得速度で三次元イメージングが可能である。また,時間多重化技術や空間多重化技術では,複数の集光点を三次元配置することによって,二次元のイメージングを並列化し,二次元の画像取得速度でイメージング領域を広域化している。本稿では,ベッセルビームを用いたボリュームイメージング技術と時間多重化による多焦点面の同時イメージング技術について紹介する。
Copyright © 2021, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.