特集 免疫系を介したシステム連関:恒常性の維持と破綻
特集「免疫系を介したシステム連関:恒常性の維持と破綻」によせて
生田 宏一
1
1京都大学ウイルス・再生医科学研究所免疫制御分野
pp.80
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200957
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免疫系はリンパ球をはじめとする免疫細胞が全身のリンパ組織および非リンパ組織に配置し,外界から入ってくる病原微生物を排除する生体防御機能を担っている。免疫細胞は一部の例外を除き全身の組織に存在し,また多くは再循環して全身をパトロールしている。したがって,免疫系は神経系と並んで生体の恒常性をコントロールする二大システムとされてきた。また,免疫系は花粉症などのアレルギー疾患,関節リウマチなどの自己免疫疾患,骨髄移植などの臓器移植等の身近な医療の話題とも関係し,国民の関心も高い。
あらゆる組織において免疫細胞が一定の役割を担っているために,医学のすべての診療科において免疫疾患が存在する。したがって,免疫系は生命科学・医科学を横断的につなぐ横糸のような存在である。近年まで,免疫学の研究は,多様性・抗原認識・免疫制御・免疫記憶などの免疫系に固有の課題に関するものが中心であったが,近年は中枢神経系・骨軟骨系・代謝系・腸内細菌などと免疫系のかかわりについての研究が大いに進展している。特に最近では,末梢神経・内分泌・概日リズムなど今まで手がつけられていなかった領域にも免疫学研究が進んできている。免疫系がどのように横糸として機能しているか,今まさに解き明かされようとしているといえる。
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