特集 核内イベントの時空間制御
特集「核内イベントの時空間制御」によせて
秋光 信佳
1
,
和田 洋一郎
1
1東京大学アイソトープ総合センター
pp.188
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200607
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
東日本大震災から6年目を迎えて,被災自治体の一部で避難解除に伴い帰還が開始されている。今日まで続けられた除染作業によって,居住エリアにおける1年間の空間放射線量は一定の目安である1mSvを下回っていることから,今後帰還する住民の健康を守るためには,低線量の放射線を,長時間被曝することによる生物的影響を明らかにする必要がある。従来DNAの二重らせんを切断するような,高線量放射線による生物学的影響の分子生物学的研究によってDNAの修復メカニズムの解明などの成果をもたらしているが,現在までに低線量被曝の生物学影響は十分解明されていない。
一方で,近年の技術的進展によって従来にない感度で生命現象を解析する手法が急速に進展し,大量に取得されたデータには,数理科学による網羅的な解析手法が加わることによって生体の科学が大きく転換している。特に,染色体という記録メディアから,遺伝情報というコンテンツを取り出すしくみにおいては,より微細な現象が,より網羅的に解析されて,従来観察することができなかった新たなメカニズムが明らかになりつつある。
Copyright © 2017, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.