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特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争
Ⅰ.細胞競合の分子細胞遺伝学
正常上皮細胞によるがん細胞の排除
EDAC(epithelial defense against cancer)
丸山 剛
1
,
藤田 恭之
1
Maruyama Takeshi
1
,
Fujita Yasuyuki
1
1北海道大学遺伝子病制御研究所分子腫瘍分野
キーワード:
細胞競合
,
変異細胞
,
細胞の社会性
,
EDAC
Keyword:
細胞競合
,
変異細胞
,
細胞の社会性
,
EDAC
pp.95-100
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200410
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多細胞組織において,細胞は互いにコミュニケーションをとりながら,協調的かつ協力的な社会性を維持している。この細胞社会において“望ましくない細胞”が生じたときには,恒常性維持のためにそれらは除去されなければならない。このような社会性から排除されるべき細胞の一つとして,がん化の初期段階にある変異細胞が挙げられる。これまでのわれわれおよび他のグループの研究によって,組織は恒常性維持のために,がん原性変異細胞を正常細胞層から積極的に駆逐することが認められてきた。上皮系培養細胞の解析からは,正常細胞もしくは変異細胞のそれぞれの細胞内で,どのような分子が細胞競合シグナルとして働いているかも明らかになってきている。また,われわれのマウスオルガノイドを用いた解析によって,より生体内に近い状況下でも,変異細胞が正常上皮細胞層から管腔側に向かって排除されていることが最近示された。本稿では,これまでがん領域においてブラックボックスであった,がんの超初期段階にある変異細胞と正常細胞がどのように相互作用しているかについて,哺乳類細胞における細胞競合にかかわる最新の研究と共に紹介したい。
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