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中枢神経系を構成するグリア細胞は,アストロサイト,オリゴデンドロサイト,ミクログリアの3種類に大別される。アストロサイト,オリゴデンドロサイトがニューロンと同じ外胚葉に由来するのに対し,ミクログリアはマクロファージなどの造血細胞と同じ中胚葉に由来し,唯一その由来が異なる。中枢神経系の免疫担当細胞であるミクログリアは,脳病態・損傷時における神経障害をいち早く感知して活性化される。活性化に伴いミクログリアはその数や形態を大きく変化させ,障害部位への遊走,死細胞の貪食,炎症性サイトカイン・活性酸素などの産生増加など様々な作用を発揮することから,種々の神経疾患への関与が示唆されている。ミクログリアは活性化されたときの形態や機能の変化が非常に顕著であるため,病態脳・損傷脳における役割に着目した研究がこれまで活発に行われてきた。また,非活性化状態を維持することの困難さから,正常状態におけるミクログリアの機能や役割の理解はあまり進んでこなかった。
近年,二光子励起顕微鏡などを用いたin vivoイメージング技術の進歩により,正常脳におけるミクログリアの役割が明らかになりつつある。生理的条件下において,細く分岐した突起を持つミクログリアがその突起を頻繁に動かしている様子や,ミクログリアがニューロンのシナプスに接触する様子が観察され,静止型ミクログリアも脳内で活発に活動していることが報告された1,2)。また,脳発達期における神経回路形成過程では,過剰に作られたシナプスが神経回路の成熟と共に減少すること(シナプス刈り込み)が知られており,この現象にミクログリアが積極的にかかわっている可能性が示唆されてきた3,4)。しかしながら,これらの報告はマウスやラットといった齧歯類を用いた解析が中心であり,ヒトを含む霊長類におけるミクログリアの役割については十分に理解されていない。本稿では,ヒトと同じ霊長類に属するコモンマーモセットを用いて,脳発達過程におけるミクログリアの動態やシナプス数の変動を解析した最新の知見を紹介する。
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