増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅰ.分子からみたシグナル操作法
4.その他
p53
田中 信之
1
Tanaka Nobuyuki
1
1日本医科大学先端医学研究所遺伝子制御部門
キーワード:
p53
,
がん抑制遺伝子
,
DNA損傷応答
,
細胞周期制御
,
アポトーシス
Keyword:
p53
,
がん抑制遺伝子
,
DNA損傷応答
,
細胞周期制御
,
アポトーシス
pp.456-457
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200305
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
p53は多くのがん細胞で遺伝子変異が検出されている代表的ながん抑制遺伝子であり,p53遺伝子欠損マウスには極めて高い頻度で腫瘍発生がみられる。更に,若年性に高頻度にがんを発症するLi-Fraumeni症候群の責任遺伝子である。p53は通常はユビキチンリガーゼMDM2と結合してユビキチン化され,プロテアソームで分解されている。しかし,DNA損傷や様々なストレスによってリン酸化,アセチル化,メチル化などの修飾を受け,MDM2との結合阻害と転写活性化能の増強によって,核内に集積して様々な遺伝子の発現を誘導する。p53は細胞周期の停止,アポトーシスの誘導,DNA修復,エネルギー代謝を初めとする様々な代謝経路の改変などを行っている。このことから,p53はDNA損傷時に働いて,細胞周期を止めてDNA修復を促すことでDNAの変異を抑制する,更には修復しきれない細胞をアポトーシスにより排除することで,遺伝子に変異が入った細胞が残ることを防いでおり,このことからゲノムの守護神と呼ばれている。更に,がん遺伝子が発現した細胞では異常なDNA合成が起こり,このDNA複製ストレスがp53を活性化してその細胞を排除することで,がん化を抑制している。このほかにも,p53は細胞内代謝の調節などの様々な作用でがん化を抑制していると考えられている1)。
Copyright © 2015, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.