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Mitogen-activated protein(MAP)キナーゼ経路はMAP3K,MAP2K,MAPKから構成される3段階のリン酸化カスケードであり,真核生物に普遍的に存在する。この経路ではMAP3KがMAP2Kをリン酸化して活性化し,活性化されたMAP2KがMAPKをリン酸化して活性化することでシグナルが伝達される。MAPKのうち,c-Jun N-terminal kinase(JNK)およびp38は紫外線,酸化ストレス,熱ショック,DNA損傷,高浸透圧,小胞体ストレスなどのストレスに応答して活性化されることから,ストレス応答性MAPキナーゼと呼ばれる。これらMAPKの活性化に至る経路がストレス応答性MAPキナーゼ経路である。また,ストレス応答性MAPキナーゼはtumor necrosis factor(TNF),interleukin-1(IL-1)などの炎症性サイトカインやlipopolysaccharide(LPS)などの微生物由来物質によっても活性化される。古典的MAPキナーゼ経路は主に増殖因子などに応答して細胞の増殖や分化に関与するのに対し,ストレス応答性MAPキナーゼ経路は主に環境ストレスに応答してアポトーシスや細胞周期の停止,炎症に関与している。
ストレス応答性MAPキナーゼ経路を構成するキナーゼについて,JNKの上流に位置するMAP2KはMKK4,MKK7であり,p38上流のMAP2KはMKK3,MKK6である。更にその上流には,MAP3KとしてMEKK1-MEKK4,MLK1-MLK3,ASK1-ASK3,TAK1など多数存在する。
これらストレス応答性MAPキナーゼの個体レベルでの機能に関しても数多く報告されている。例えば,JNKはアポトーシスを誘導することで前脳や後脳の発生に,p38は心血管の発生に必要な転写因子の活性化を介して血管新生にかかわっている。更に免疫系における機能としてToll様受容体(Toll-like receptor;TLR)を介した自然免疫応答,サイトカインの放出,T細胞の分化や成熟,活性化などにも関与している1,2)。
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