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特集 最近のMAPキナーゼ系
RasとMAPキナーゼ系
Ras and the MAP kinase superfamily
小出 寛
1
,
上代 淑人
1
Hiroshi Koide
1
,
Yoshito Kaziro
1
1東京工業大学生命理工学部
pp.136-139
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901183
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ras遺伝子は細胞を癌化させるウイルス中に存在する癌遺伝子として1964年に発見された1-3)。その後,実際に多くのヒト固形腫瘍にras遺伝子の活性型変異が見いだされ,細胞の癌化におけるras遺伝子の役割が世界中の多くの癌研究者の注目を集めた。また,ras遺伝子はウイルスだけでなく,もともと宿主の細胞の染色体にも存在しており,増殖や分化という細胞の正常な機能において重要な役割を果たしていることが明らかになった。ras遺伝子は,哺乳類ではHa-ras,Ki-ras,N-rasの三つのアイソフォームを持ち,その産物(Ras)は細胞膜に局在する分子量約21,000の低分子量GTP結合タンパク質である。RasはGDP結合型(不活性型=上流からシグナルを受け取る状態)とGTP結合型(活性型=下流にシグナルを伝える状態)の二つの状態を遷移することによって,細胞内のシグナル伝達における「分子スイッチ」的な役割を果たしている4)(図1)。Rasが正常細胞の増殖や分化において重要であること,そしてRasの活性型変異と細胞の癌化とが密接な関係を持っていることから,Rasの下流で機能している分子の同定が癌研究者らの大きな興味の焦点であった。
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