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Ran(ras-related nuclear protein)は低分子量Gタンパク質ファミリーの一つであり,GTP結合型とGDP結合型との間の変換によって,様々な細胞内反応を制御するスイッチとして機能する。他の低分子量Gタンパク質と同様,グアニンヌクレオチドの変換サイクルは,特異的なguanine nucleotide exchange factor(GEF)とGTPase activating protein(GAP)により行われる(図1)。最も重要な機能としては,細胞質-核質間のタンパク質輸送の制御が挙げられるが,ほかにも分裂期における紡錘体集合,微小管構築,核膜形成の制御などにも関与していることが知られている1)。核-細胞質間輸送では,カリオフェリンを初めとする輸送担体による能動輸送に必須な因子として重要な役割を果たしている2,3)。RanのGTP型とGDP型では細胞内局在に大きな違いがみられる。RanGEFであるRCC1はクロマチンに結合しているため,間期核では核内のRanGTP濃度が細胞質に比べて高い。一方,細胞質ではRanGAPが局在しているため,GDP型が主要となる。このように,核膜を隔てたRanGTP-GDPの濃度勾配が,カリオフェリンを介した能動輸送の間接的なエネルギー源となっていると考えられる(図2)。分裂期では,染色体に結合しているRCC1により染色体周辺でRanGTPの蓄積がみられ,染色体から遠ざかるに従って濃度が減少する。このRanGTPにより,染色体周辺ではスピンドル形成因子群がimportinなどの輸送担体から解離し,紡錘糸の正常な伸長,結合,維持などを制御している4,5)。
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