増大特集 細胞シグナル操作法
序にかえて
編集委員一同
pp.387
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200270
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研究者が実験の過程で,専門外の細胞内シグナルについて調べる必要に迫られることがよくあります。また,文献などを読んでいてあまりよく知らないシグナルが出てきて,ちょっと知りたいと思うことも少なくないでしょう。そのようなときに,いつも手元にあって手引きになるような一冊があればよい。自分たちが「今,欲しい」と思う特集号を組もうというコンセプトで編集委員の意見が一致し,今回の増大特集号の企画が生まれました。
細胞内シグナル研究の歴史をたどると,ちょうど55年前の1960年,ロックフェラー(当時はまだ研究所でした。その後,大学院大学になります)のリップマン研究室で江橋節郎先生は筋小胞体へのカルシウム結合を発見し,筋収縮調節のカルシウム説を提唱しました。当時,国際的にはこの説はアンネマリー・ウェーバー以外には認められず,江橋先生は世界を相手に孤高の戦いを行ってきました。そして,筋側でもカルシウム結合蛋白質を見つけなければ世界を説得できないと感じ,このような蛋白質を発見することを決心されました。その後,江橋文子先生を初めとした江橋研究室全員の協力によって,江橋先生はカルシウム結合蛋白質“トロポニン”の発見に至り,世界は初めてカルシウムによる筋収縮調節説を受け入れました。
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