特集 生物進化の分子マップ
序にかえて
伊藤 正男
,
石川 春律
,
野々村 禎昭
,
藤田 道也
pp.342
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100253
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単細胞生物が地上に出現し,それが多細胞生物を生み,さらに脊椎動物へ,哺乳類へ,霊長類へと膨大な時間をかけて進化しました。その過程の中に,遂には人類に到達した生物進化の謎を解き明かす鍵が隠されています。特に,主要な機能分子のありようを各生物について比較し,その変遷を辿ることによって,壮大な生物進化の筋書きを読み取ることが出来る筈です。
本倍大特集号はそのような期待のもとに企画されたものですが,次の3点に特に注目しました。(1)同一の分子種が下等な生物から高等動物に至るまで,その構造を少しずつ変化させながら共通に維持されていること。この考察は,下等動物と高等動物の共通項を括りだし,この共通項の上に進化が何を付け加えていったかをとらえる視点を与えてくれる。(2)多くの分子種が沢山の亜系を生んで,大きなファミリーを作り,そのファミリーが変遷すること。一つの生物種においても,主要な機能分子の多様性には目を見張るものがある。この観点は,多くの機能分子が大きなファミリーを作って存在する所以を理解する手掛かりを与えてくれる。(3)同じ分子種が生物種によっては違った状況にはめこまれて,違った働きをすること。同じ生物種でも,身体の部分によって(例えば脳の部位によって)同じ分子が全く違う働きをする例が知られている。同じ分子に多様な機能を発揮させるという,生物の成り立ちに見られる驚くべき経済性である。
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