Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome;SFTS)は,2009年に中国の河南省や湖北省などで原因不明の急性感染症として初めて流行が確認された新興ウイルス感染症である1)。SFTSは,高熱,消化器症状,血小板減少,リンパ球減少などの特徴的な症状を呈する(表1)。流行当初は,臨床症状などから顆粒球アナプラズマ症が疑われたが,ほとんどの患者でアナプラズマ感染が否定された。多くの症例でC反応性タンパク質(C-reactive protein;CRP)が上昇しないことからウイルス感染症が疑われ,2011年に中国予防医学中心のLi Dexin教授の研究チームによりブニヤウイルス科フレボウイルス属の新興ウイルスが同定され,SFTSウイルスと命名された1)。SFTSはマダニ媒介性の感染症である。その後,わが国や韓国でもSFTS患者が確認されている2-4)。わが国では「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)で四類感染症に指定されている。国内では西日本に集中して患者が発生し,これまでに100名以上の患者が確認されていて,その致死率は約30%と中国でのSFTS患者の致死率と比較して高い。これは,これまでのSFTSの報告症例が重症例を中心とした症例であることを示している。今後,軽症例も幅広く診断されることにより,わが国におけるSFTSの疫学をより詳細に明らかにしていく必要がある。SFTS患者には,マダニ刺咬の既往やマダニの刺し口が確認されない症例もあることから,その有無にかかわらず,臨床的にSFTSが疑われる患者には積極的に確定検査を行う必要がある。現在,国立感染症研究所ウイルス第一部および全国の地方衛生研究所において,RT-PCR法(reverse transcription polymerase chain reaction)によるSFTSウイルス遺伝子検査を実施する体制が整備されている。血清診断は国立感染症研究所で実施可能である。
Copyright © 2015, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.