増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
3.進化・分子進化
(3)エピゲノム脊椎動物種間比較
中村 遼平
1
,
塚原 達也
1
,
武田 洋幸
1
Nakamura Ryohei
1
,
Tsukahara Tatsuya
1
,
Takeda Hiroyuki
1
1東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻
pp.456-457
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200037
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■遺伝子の転写調節領域とクロマチン修飾
生物の形態形成のための情報はゲノムのDNA配列にコードされていると考えられているが,どのDNA配列に種間で普遍的な形態を作るための情報がコードされており,どの配列が種特異的な形質を生み出しているのかを明らかにすることは難しい課題である。それどころか,発生を制御する遺伝子の転写調節領域をゲノム上で同定し,種間で比較することすら思ったほど容易な問題ではない。これは,そもそも遺伝子の転写調節領域といったゲノム上の機能的領域がこれまでにわかっている転写因子結合配列などの情報だけからでは予測できないためである。しかし,近年の分子生物学の発展によって,一般的に遺伝子発現はDNAやヒストンへの化学的修飾を介して制御されていることが明らかになってきた。実際,遺伝子のクロマチン修飾パターンから個々の遺伝子の発現量をある程度予測できることがわかっている1)。また,エンハンサーは特定のクロマチン修飾によって識別できることも明らかにされている2)。したがって,クロマチンの修飾パターンを解析することで,個々の遺伝子の転写調節領域を種間で比較することが可能である(図A)。
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