増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
3.進化・分子進化
(2)リポソーム内分子進化
角南 武志
1,2
,
四方 哲也
1,2,3
Sunami Takeshi
1,2
,
Yomo Tetsuya
1,2,3
1科学技術振興機構ERATO四方動的微小反応場プロジェクト
2大阪大学大学院 情報科学研究科 バイオ情報工学専攻
3大阪大学大学院 生命機能研究科
pp.454-455
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200036
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
■原始生命の進化能獲得
進化能は生物らしさを象徴する重要な特性の一つである。より環境に適応した個体がその遺伝情報を子孫に引き継ぐことで,生物は進化することができる。そのようにして生物が進化可能なのは個々が有する特性が遺伝情報として保持されており,遺伝子型と表現型との間に強固な対応関係があるからである。その関係を代々維持してゆくために,生物は遺伝情報の複製や子孫への分配に関して複雑な制御機構を有しており,遺伝情報分子であるDNAの数を厳密に管理している。それでは,そのような高度な制御機構をまだ獲得していなかったであろう原始生命は,どのようにして進化することができたのだろうか。
RNAワールド仮説によれば,遺伝情報としても酵素としても機能する自己複製可能なRNAの出現により,原始生命は進化能を獲得したと考えられる1)。この場合,RNAが遺伝情報と機能を両方担っており,RNA自身を介して遺伝子型と表現型が対応づけられている。さらに進化の段階が進み,遺伝情報と機能を別々の分子が担当するようになると,その対応関係を維持するためには何らかの工夫が必要となる。例えば,リポソームのような両親媒性分子で形成された微小な小胞を器として用いれば(図A),遺伝情報分子とその産物を同一の区画内に保持することができる。しかし,遺伝情報分子の数を少なく保つ機構がなければ,個々の遺伝子変異が表現型に反映されづらく,進化が抑制されると推測される。そのような環境下でも原始生命は進化することができたのだろうか。
Copyright © 2014, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.