増大特集 生命動態システム科学
Ⅰ.定量生物学
1.分子・細胞の計測
2)1分子計測
(3)単分子スペックル(SiMS)顕微鏡が解明したアクチン重合制御
小関 和馬
1
,
渡邊 直樹
2
Koseki Kazuma
1
,
Watanabe Naoki
2
1東北大学大学院生命科学研究科 単分子動態生物学分野
2京都大学医学研究科 神経・細胞薬理学
pp.396-397
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200007
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■はじめに
細胞は生理活性物質のみならず,細胞外環境の硬度などの物理特性の違いや外力に応答して,遊走の方向,増殖,分化などを大きく変化させる。このとき細胞表層に発達するアクチン細胞骨格の形態が大きく変化する。アクチン線維(Fアクチン)の動態の制御分子には,細胞先導端でFアクチンの横に枝分かれ状の重合核を作るArp2/3複合体や,分裂溝やアクチンストレス線維を形成するフォルミンファミリー,Fアクチンを切断・脱重合するコフィリンなどがある。
この複雑なアクチン動態の解析にあたって,われわれの開発した単分子スペックル顕微鏡(single-molecule speckle microscopy;SiMS顕微鏡)は有用なツールである1)。SiMS顕微鏡はごく低濃度の蛍光標識分子を導入することで,細胞構造に結合した分子をスペックル(斑点)として1分子ごとに可視化する。SiMS顕微鏡はアクチン重合・脱重合,その制御分子の挙動の精密な定量化が可能である。特に近年,本手法によって物理ストレスによるアクチン重合制御について明らかになりつつある。本稿ではSiMS顕微鏡によって明らかとなった細胞先導端でのアクチン動態,フォルミンファミリーによるアクチンの速い重合,そして物理ストレスによるFアクチンの迅速な再生について紹介する。
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