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●S100A9の新規受容体,EMMPRINの発見
S100タンパク質は分子量1万前後で,2個のEF-handを持つカルシウム結合性タンパク質であり,約20種類のファミリーメンバーが知られている。これらS100タンパク質ファミリーは様々な生理的現象にかかわっているが,未解明の部分が多く残されている。また,S100ファミリーの多くが染色体1q21のEpidermal differentiation complex(EDC)と呼ばれる領域に存在する。この部位にはフィラグリン,インボルクリン,ロリクリン,SPRRといった,表皮の分化マーカーが存在しており,表皮細胞の機能にも関与していると推測される。S100A8,S100A9もこの部位に存在するが,これらのS100蛋白質は炎症のマーカーとして知られている。S100A8とS100A9は,生体内ではヘテロダイマー(S100A8/A9:カルプロテクチン)を形成し,安定に存在すると考えられている。
われわれはまず,ヒト表皮ケラチノサイトを用いて,S100A8/A9の影響について検討した1)。培養液中にS100A8/A9を添加し,3時間後および24時間後のmRNA発現変化をマイクロアレイ法により検討した。その結果,S100A8/A9添加3時間後では,CXCL1,2,3,およびCXCL8(IL-8),IL-6,IL-1β,TNFαなど,一連の炎症性サイトカイン,ケモカインが強く誘導され,24時間後では,これらに加えて,S100A8/A9そのものと,MMP1,2,10が誘導された。さらに,これらのサイトカインをケラチノサイトの培養液に添加したところ,S100A8/A9の発現亢進と分泌促進が観察された。これらの結果はS100A8/A9と一連の炎症因子との間に,ポジティブ・フィードバック機構が存在することを示している。
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