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●消化管における栄養素の感受機構
消化管は摂取した食物を消化し,栄養素を吸収する器官である。その一方で他臓器の機能を制御するホルモンを分泌する。インクレチンとは食物摂取に伴い消化管から分泌され,膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンである。これまでにglucose-dependent insulinotropic peptide(GIP)とglucagon-like peptide-1(GLP-1)の二つがインクレチンとして機能することがわかっている。具体的にはGIPは上部小腸に存在する小腸内分泌K細胞(以下,K細胞)から,GLP-1は下部小腸に存在する小腸内分泌L細胞(以下,L細胞)から分泌される。このK細胞およびL細胞は開放型の内分泌細胞であり,小腸粘膜の基底膜上に存在する。頂部は小腸管腔側にまで達しており,その頂部を覆う微絨毛が管腔側の栄養素を感受するような構造をしている。
これまでの研究から,糖および脂質を中心とした栄養素がインクレチンの分泌因子であることがわかっている。L細胞においてはナトリウム依存性グルコーストランスポーター(sodium dependent glucose transporter 1;SGLT-1)を介したグルコースの細胞内流入とATP感受性K+チャネルの閉口が,糖依存性GLP-1分泌を制御する。しかし,非代謝性糖類でもGLP-1分泌を引き起こす可能性があることから,Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)の一種である甘味受容体(Tas1R2とTas1R3のヘテロダイマーで構成される)のGLP-1分泌への関与も示唆されている。脂質に関してはGPCRの一種であるGPR40(長鎖脂肪酸受容体,またはFFAR1とも呼ばれる),GPR119およびGPR120がGLP-1分泌を制御していることがわかっている。このように,3大栄養素のうち,糖と脂質のL細胞における感受機能については解明が進んでいるが,アミノ酸の感受機構については不明な点が残されている。そこで本稿ではアミノ酸を感受することによって活性化するGPCRを介したL細胞におけるGLP-1分泌機構について概説する。
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