特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
8.膜小胞と封入体
過剰なp62と封入体形成
蔭山 俊
1
,
小松 雅明
1
Shun Kageyama
1
,
Masaaki Komatsu
1
1東京都医学総合研究所 蛋白質リサイクルプロジェクト
pp.526-527
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101381
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●封入体形成とオートファジー
封入体はアルツハイマー病やパーキンソン病を始めとした神経変性疾患,アルコール性肝炎やα1アンチトリプシン欠損症などの肝疾患,さらには肝細胞がんや神経膠腫などの悪性腫瘍の病変部位において確認されるタンパク質の凝集体である1)。封入体は病理切片においては異染色領域として認められ,一部の例外を除いてユビキチン化タンパク質を含んでいることから,その形成にはユビキチン-プロテアソーム分解系の異常が示唆されてきた。事実,プロテアソーム活性を阻害した細胞やプロテアソームのサブユニットを欠損した神経細胞において,ユビキチン陽性の封入体が観察される1)。
一方,別の分解系であるオートファジーの活性を欠く細胞や組織においてもユビキチン陽性の封入体が形成される2)。オートファジーは細胞質の一部をオートファゴソームと呼ばれる二重膜構造体が隔離し,オートファゴソームがリソソームと融合することにより執行されるバルクな細胞内分解機構である。オートファジーの不全は,細胞質タンパク質や細胞小器官の新陳代謝の障害やプロテアソームで分解されるべきタンパク質の分解障害を引き起こす2)。これらの影響はミスフォールドやアンフォールドしたタンパク質の蓄積が伴うため,オートファジー不全組織における封入体形成を部分的には説明可能である。しかし,ユビキチン結合タンパク質p62/A170/SQSTM1(以下p62)が選択的にオートファジーにより分解されることが判明し,p62代謝不全によるユビキチン陽性封入体形成が明らかになった。
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