特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
8.膜小胞と封入体
Multivesicular Bodyの形成とESCRT複合体の役割
森田 英嗣
1
Eiji Morita
1
1大阪大学 微生物病研究所 感染症国際センター
pp.522-525
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101380
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細胞表面の増殖因子受容体やイオンチャネルなどの膜蛋白質は恒常的に細胞表面に存在しているわけではなく,必要に応じてエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。これら膜蛋白質は細胞内膜輸送系を介してエンドソームに到達した後,様々な選別を受けている。例えば,鉄イオンを細胞内に取り込むトランスフェリン受容体,脂質を取り込むLDL受容体は細胞内で捕捉したリガンドを放出した後,リサイクリングエンドソームによって再び細胞表面へと輸送される。一方,細胞内にシグナルを伝える増殖因子受容体は恒常的なシグナル伝達を抑えるために,一定期間細胞表面で機能した後,細胞内消化の場であるリソソームへと輸送され分解される運命をたどる。
このリソソームへの膜蛋白質の輸送の過程で,標的膜蛋白質は膜とともにエンドソーム内側へと貫入・出芽し内腔小胞として分離される。このようなリソソームへの蛋白質輸送の過程でみられる内腔小胞を含有するエンドソームをMVB(multivesicular bodies;多胞体)・後期エンドソームと呼ぶ。MVB小胞形成を介した膜蛋白質輸送システムは膜受容体分子の分解過程だけでなく,リソソームで作用する加水分解酵素の輸送・活性化にも用いられている。この加水分解酵素の前駆体はゴルジ輸送経路で糖鎖修飾を受けた後,エンドソームに蓄積され選別を受け,増殖因子受容体と同様にMVB小胞形成よって膜から分離され,リソソーム内でプロセッシングされることにより成熟し活性化される。
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