特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
6.ファゴソーム
オートファジーと小胞輸送におけるスフィンゴ脂質の役割
木原 章雄
1
Akio Kihara
1
1北海道大学大学院 薬学研究院 生化学研究室
pp.482-485
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101362
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●スフィンゴ脂質の生理機能
スフィンゴ脂質は酵母から哺乳類まで真核生物に保存された脂質分子であり,グリセロリン脂質,コレステロールと並んで細胞膜の主要構成脂質の一つである。スフィンゴ脂質には他の脂質では代替できない特異的な機能があり,スフィンゴ脂質生合成遺伝子の欠損体はこれまで作製されたどの生物でも致死となる。スフィンゴ脂質の疎水性の骨格はセラミドであり,極性基として哺乳類ではホスホコリンまたは糖鎖が付加され,それぞれスフィンゴミエリン,スフィンゴ糖脂質となる。哺乳類には数百種類にも及ぶスフィンゴ糖脂質が存在している。また,スフィンゴ脂質の代謝産物の一つにスフィンゴシン1-リン酸(S1P)があり,脂質メディエーターとして機能する1)。特に免疫系でのS1Pの機能を利用したフィンゴリモドは,昨年多発性硬化症の治療薬として認可され,注目を集めている。
スフィンゴ脂質の代謝異常が原因となる疾患として,ニーマンピック病を始めとした30を超えるスフィンゴリピドーシスが知られている。スフィンゴ脂質の生理機能は,皮膚バリア機能(セラミド),インスリン抵抗性(スフィンゴ糖脂質GM3),免疫(S1P),血管形成(S1P),ウイルス/バクテリア毒素認識(スフィンゴ糖脂質),ミエリン形成(スフィンゴ糖脂質サルファチド)を含め,多岐にわたる。このように,スフィンゴ脂質の生理機能や病態への関与に対する知見は多いが,細胞/分子レベルでの役割にはいまだ不明な点が多く残されている。本稿では最近われわれが見出したスフィンゴ脂質のオートファジーやエンドソームを介した小胞輸送関与について紹介する。
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