今月の主題 オートファジー
話題
胚発生におけるオートファジーの役割
塚本 智史
1,2
Satoshi TSUKAMOTO
1,2
1独立行政法人放射線医学総合研究所実験動物開発・管理課
2独立行政法人放射線医学総合研究所先端動物実験推進室
キーワード:
オートファジー
,
卵子
,
受精
,
不妊症
Keyword:
オートファジー
,
卵子
,
受精
,
不妊症
pp.1597-1601
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102169
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1.はじめに
体外受精によって産まれた子ども,いわゆる試験管ベビーの誕生から30年が経過したが,この間に体外受精や顕微授精法(卵細胞質内精子注入法)などの人工授精によって誕生した子どもの数は,全世界で100万人以上と推定されている1).不妊症の割合は年々増加しており,人工授精によって誕生する子どもの数は今後さらに増加すると思われる.しかし,不妊にかかわる分子メカニズムの多くは明らかになっていないのが現状である.したがって,不妊にかかわる分子メカニズムの解明は,不妊症のための新たな治療戦略となるかもしれない.
最近,筆者ら2)は,受精直後のマウス胚でオートファジーが活発に誘導されることを発見した.これまで初期胚発生におけるオートファジーの役割については,あまり議論されていなかった.なぜなら,オートファジーが全身で機能しないマウスでも出生に至ることから3),それまでの発生段階にオートファジーは必要ないと考えられていたからである.しかし,卵子でのみオートファジーを欠損するマウスを作出し,受精直後に起こるオートファジーを抑制した場合,この受精卵は着床前の4~8細胞期の致死となることが明らかとなった2).ヒトの胚でもオートファジーが必須かどうかは定かではないが,オートファジーの生理機能は酵母や植物からヒトに至るまで広く保存されており,ヒトの胚でも同様の役割を担っている可能性は十分に考えられる.本稿では,哺乳動物の胚発生におけるオートファジーの新しい生理機能を解説する.
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