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特集 筋ジストロフィーの分子病態から治療へ
先天性筋無力症の分子基盤
Molecular bases of congenital myasthenic syndromes
手塚 徹
1
,
山梨 裕司
1
Tohru Tezuka
1
,
Yuji Yamanashi
1
1東京大学 医科学研究所 腫瘍抑制分野
pp.106-111
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101120
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神経筋接合部(neuromuscular junction;NMJ)は運動神経による骨格筋収縮の支配に必須のシナプスである。運動神経の興奮に伴い,NMJでは運動神経軸索末端の前シナプス領域からシナプス小胞内のアセチルコリン(acetylcholine;ACh)がシナプス間隙に放出される。放出されたAChが骨格筋中央部の後シナプス領域に凝集しているイオンチャネル型のACh受容体(AChR)に結合すると,AChRの開口により終板電位(endplate potential;EPP)が生じ,活動電位の発生を経て筋線維の収縮が起こる。先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndromes;CMS)はNMJの形成・維持や機能の制御に重要な分子の先天的な異常により,骨格筋の筋力低下と易疲労性を来す難治性の疾患である。
CMSは原因となる遺伝子異常などの要因により多様な病態を呈する疾患であり,後述するスローチャネル症候群以外のCMSはいずれも劣性の遺伝病として知られている。さらに,本疾患は病因となる異常の部位により,前シナプス型,シナプス型および後シナプス型に分類され,その約80%を後シナプス型CMSが占める。本稿ではこれら3種の類型について,それぞれの分子基盤を概説する。なお,最新の知見として比較的詳しく紹介するDok-7,MuSK,Agrinの遺伝子異常によるCMS以外については,既に他の総説にて詳細な記述がなされている1-5)。
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