特集 伝達物質と受容体
4.ペプチド
オピオイド
脊髄の虚血損傷とδオピオイド受容体アゴニストの髄腔内投与
堀内 俊孝
1
,
川口 昌彦
2
,
古家 仁
2
Toshinori Horiuchi
1
,
Masahiko Kawaguchi
2
,
Hitoshi Furuya
2
1ベルランド総合病院麻酔科
2奈良県立医科大学麻酔科学教室
pp.460-461
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100918
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[用いられた物質/研究対象となった受容体]
SNC80/δオピオイド受容体
胸部および胸腹部大動脈手術後の対麻痺は,患者のQOLを著しく低下させるのみならず,術後の死亡率を増加させることが明らかになっている。術後対麻痺の主な原因は脊髄虚血とされており,脊髄の虚血耐性を高める薬剤についても多くの検討がなされてきた。δオピオイド受容体は動物の冬眠誘発に関連した受容体である1)。冬眠中の動物はエネルギー気質が非常に欠乏した状態でも生存できるということから,δオピオイド受容体が臓器保護に関与しているかもしれない。過去の報告では,δオピオイド受容体アゴニストが摘出臓器に対する保護効果を有する2)ことや,心臓の虚血耐性獲得効果を有する3)ことなどが示されている。中枢神経においても,ラット前脳虚血モデルでδオピオイド受容体が脳保護効果に関与する可能性について報告されている4)が,脊髄虚血に対する保護効果については報告されていなかった。われわれはラット脊髄虚血モデルにおいて,δオピオイド受容体アゴニストを虚血前に髄腔内投与することで,虚血後の下肢運動機能障害ならびに脊髄神経障害を軽減することを報告した5-6)ので,以下にその概要を記す。
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