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はじめに
脳内ドパミン系は,他のモノアミン系に比べて比較的限局した部位に存在することから,その機能に関しての解明が進んでおり,この系の異常が指摘されているいくつかの精神神経疾患がある。このうち精神疾患でもっとも重要な精神分裂病の病因には,脳内ドパミン系の機能亢進が想定されて久しいが,いまだにそれにとってかわるような仮説は登場しておらず,現在もドパミン系を中心に様々な病因究明の研究が行われている(Losonczy,1987)。分裂病に限らず幻覚妄想状態の発現とドパミン受容体の刺激過剰とは深く関わっており,分裂病の治療に用いられる各抗精神病薬の薬効のうちでもっとも明瞭なのは抗幻覚妄想作用であり,作用機序として共通しているのはドパミン受容体への拮抗作用である(Carlsson,1978)。一方,神経系の変性疾患のうち,パーキンソン病は,黒質線条体ドパミンニューロンの変性によって線条体でのドパミン含量が減少することが証明されており,このため治療としては,ドパミン系の機能を高める薬物が使用され,二次的にしろドパミン受容体にも変化が及んでいると考えられる。逆にジスキネジアなどの錐体外路系不随意運動は黒質線条体ドパミン系の機能亢進が想定されている。この他にも脳内のドパミン系が関与している精神神経疾患は多く,それぞれドパミン受容体の拮抗薬や作動薬が治療に用いられている。そして,このような薬物の作用機序や副作用として生じる錐体外路症状の病態を知っておくことは臨床的に重要なことである。
一方,従来の病因究明の方法とはまったく異なるアプローチの仕方として遺伝子を用いた連鎖研究が精神神経疾患でも最近盛んに行われている。ドパミン受容体に関しても,分子生物学的研究によって次々と亜型の遺伝子が同定され,それを用いてドパミン受容体に異常をもつと想定されている疾患との関連をみることによって,病因に迫ろうとする研究が端緒についている。 ここでは,各ドパミン受容体遺伝子の同定とその性質をまず紹介し,それらと精神神経疾患との関連について主に最近の知見をまとめてみた。
This article reviews the advances made in the molecular biology of dopamine receptors, and discusses the relationship between these receptors and neuropsychiatric disorders. Until recently, it was accepted that dopamine affects its target cells in the brain via interaction with only two receptor subtypes, D1 and D2. However, molecular biological studies have confirmed the existence of additional dopamine receptors, D1, D2, D3, D4 and D5, which have been cloned, characterized and classified in two subgroups, D1 (D1 and D5) and D2 (D2, D3 and D4), according to their gene organization,pharmacology and signalling systems. The amino acid sequences of all these receptors reveals that they belong to a large superfamily, that of receptors with seven transmembrane domains and coupled to their intracellular transduction system by a G protein.
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