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[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ビククリン/GABAA受容体
●加齢による脳機能変化
脳機能は発達に伴って成熟し,加齢にともなって言語機能は保たれるものの短期記憶,長期記憶共に低下することが知られている。加齢した脳では嗅内野に神経原線維変化が見られる。神経原線維変化は微小管結合タンパク質タウが過剰にリン酸化され線維化したものであり,この神経原線維変化が辺縁系,新皮質へ拡がると認知症となる。一方,前頭前野白質層の萎縮が加齢に伴って増大することがMRIによって観察されている。さらに,機能的MRIを用いた研究では記憶課題において海馬傍回の活性低下と基底核,前頭前野部位の活性化が観察されている。この加齢による活性変化は,脳機能の補償機構により低下した海馬傍回機能を前頭前野が機能代償を行っていると考えられている。このように,脳のシステムレベルにおいて機能恒常性を保つ機構が発動し,脳機能を正常範囲に保とうとする。
同様のことはシナプスそして神経ネットワークレベルにおいても起きている。恒常的可塑性(Homeostatic plasticity)は神経回路中の活性を一定に保つため抑制性,または興奮性シナプスを調節する仕組みである。この機構の中でGABAA受容体が作用することで神経回路の過剰な興奮を抑制している。このように,通常脳は回路機能の補償,さらに脳システムとしての機能補償を行うことで正常な脳機能を保っている。例えば,Wilkinsonらは若齢ラットと老齢ラットを用いて海馬CA3における場所神経の活動を調べている。若齢ラットは環境に応じて場所神経が形成されるのに対して,老齢ラットでは環境を変えても同じ場所神経が同一の場所で活性化することを見出している。これは,加齢にともなって脳内での環境認知様式が変化していくことを示している。
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