Japanese
English
特集 睡眠と脳回路の可塑性
睡眠時の振動的神経活動とその機能
Rhythmic neural activities during sleep and their possible functions
辛島 彰洋
1
,
岩崎 直穂子
1
,
片山 統裕
1
,
中尾 光之
1
Akihiro Karashima
1
,
Naoko Iwasaki
1
,
Norihiro Katayama
1
,
Mitsuyuki Nakao
1
1東北大学大学院情報科学研究科バイオモデリング論分野
pp.295-302
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100857
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
学習や記憶などの脳高次脳機能やその発達・維持への睡眠の寄与が明らかになってきている1)。睡眠時には振動的な神経活動が著明に現れる。睡眠が脳において機能を果たしているなら,これらの振動現象の意義を考えないわけにはいかないだろう。ノンレム睡眠時の7~14Hzの紡錘波や1~4Hzのδ波,およびレム睡眠時の5~8Hzのθ波などはその代表例である。このうち,紡錘波やδ波は,それを作り出すニューロンの周期的バースト発火とシナプス可塑性との関係が示唆されている2,3)。また,θ波は覚醒時には動物の探索行動に伴って現れ,海馬におけるシナプス可塑性への深い関わりが指摘されてきた4,5)。特にθ波の振動位相の持つ意味が明らかにされてきている5,6)。
本稿では,ノンレム睡眠およびレム睡眠の脳機能における役割をそれぞれの睡眠状態を特徴付ける振動的神経活動のダイナミクスを通して説明する。まず,ノンレム睡眠時δ波パワーをプローブとして,体性感覚遮断によって引き起こされる神経回路網の再編成と睡眠との関係について論じる。また,レム睡眠期に脳幹で生成されるスパイク状のPGO波と海馬および扁桃体のθ波との協同的な振舞いについて最近の知見を紹介する。それぞれの現象は学習や記憶への関わりが強く示唆されていることから,この協同性はレム睡眠の機能的意義を考える上で興味深い。
Copyright © 2009, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.