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「イヌはヒトとコミュニケーションをとりたがっている」これはイヌを飼っていた人ならおそらくだれでもそう思っているに違いない。ドリトル先生ではないが,“犬の意思が分かる夢のマシン”はイヌの鳴き声をマイクでひろい,AD変換したデータを音声データベースにマッチングし,声紋による周波数分析で,フラストレーション,威嚇,自己表現,楽しい,悲しい,要求といった6種類の感情表現に分類し,表示されるらしい。Charles Robert Darwinはヒト言語について「動物のさまざまな情報伝達手段には種の進化にともなった程度の差があるだけで,本質的な差異はない,人間の言語は音的単位の結合を利用することによって,今日の進化をした」と考えた1)。しかし,実証性をともなわない言語の発生に関する論議は長らく歴史の中で封印され,Noam Chomsky(1928-)2)による生成文法の理念まで,本格的な議論を待たねばならない。
ヒト(ホモサピエンス新人)の言語の特徴は,音声の二重文節(double articulation)により音と意味を結合させた記号をつかった情報伝達行為手段にあるそうである。チンパンジーやゴリラなどの類人猿あるいはイルカ,鳥類などの他動物種はメッセージを伝える何らかの手段をもっているかもしれないが,ヒト言語のような複雑な意味を表現する情報伝達手段をもってないとされている。そういう考え方からすれば,ボーダーコリーのRicoが200語ヒトの言葉を覚え,理解したとしても(図1)3),チンパンジーのアイちゃんがヒトの言葉を覚えたとしても,そんなのヒト言語と関係ないと言語学者が考えていてもおかしくない。研究分野が違うといってしまえばそれまでである。
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