Japanese
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展望
ヒトの社会行動の脳神経基盤―自閉症研究への示唆
Neural Basis of Human Social Behavior and its Implication for Autism Research
山末 英典
1
Hidenori YAMASUE
1
1東京大学医学部附属病院精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan
キーワード:
Autism spectrum disorder
,
Oxytocin
,
Pervasive developmental disorder
,
Social behavior
,
Sex difference
Keyword:
Autism spectrum disorder
,
Oxytocin
,
Pervasive developmental disorder
,
Social behavior
,
Sex difference
pp.454-464
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102171
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はじめに
ヒトの脳は,駆け引きや欺き,あるいはそれに対する防衛など,社会的な対人交渉のためにこそ言語機能も獲得し,他の霊長類の追従を許さないほど巨大に発達したのだという主張がある12)。実際,日常生活でも対人相互作用などを行う社会的場面では,知覚,認知,情動,意欲などの精神機能を統合し,瞬時にして膨大な情報処理能力が要求されていると思われる。たとえば,我々は日常的に何気なく他者の意図を推測して自らの行動を調節しているが,これについても表情認知,視線の処理,情動制御,共感などの高次の精神機能を統合して実現していると思われる。こうした社会機能を支える共感や道徳性さらには愛他性などの高次の感情は,人間特有で,高度に組織化された人間社会の基盤を成すと考えられてきた。
一方で,伝統的な脳科学の領域では,対人的な要素を排除した純粋な知覚処理など,狭義の認知機能の脳神経基盤の解明に焦点が当てられ,社会・対人的な情報の脳神経基盤については比較的近年になって関心が向けられてきたところである1)。そして,最近10年間でこの領域の研究は飛躍的に増加した42)。本稿では,共感や他者の意図の理解などの社会認知の脳基盤についての近年の研究成果を概観する。その際に,男女差,神経ペプチド,自閉症スペクトラム障害における社会性の障害の脳基盤といった観点から知見を整理し,今後のこの領域の研究が向かうべき方向を浮かび上がらせるべく試みたい。
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