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脳において,アストロサイトは支持細胞として神経細胞のために細胞外環境の維持,エネルギー代謝の補助などを果たしていると考えられてきたが,最近では神経回路網の統合,髄鞘の形成と維持,血液脳関門の閉鎖機能など神経機能のそのものの維持により重要な役割を果たすことがわかってきた。実際に,アストロサイトはシナプス結合部で放出された神経伝達物質の拡散を制限し,シナプス間隙からの神経伝達物質の能動的な除去などを行う。また,神経細胞と同様に電気的,化学的な反応を引き起こす神経伝達物質受容体が膜に存在し,細胞外カリウム濃度の調節を行っていることも明らかになっている。
一方,オートファジー(自食作用)は隔離膜と呼ばれる小胞膜で細胞内の不要な構造物を細胞質の一部とともに包み込み,ライソゾームと融合することで分解する現象で,細胞の自己蛋白質分解の仕組みである。オートファジーは栄養飢餓状態でのアミノ酸産生,蛋白質品質管理やクリアランス機能に加えて,個体発生過程における細胞死,細胞内に侵入した病原微生物の排除,ハンチントン病などの種々の神経変性疾患,細胞の癌化抑制などに大きな役割を果たすことが明らかになり,注目されている。mTORは転写・翻訳,細胞の大きさや細胞骨格の再構成などの制御に加え,オートファジーにも重要な役割を果たす分子であるが,中枢神経系における役割は不明な部分が多かった。しかし,近年,癌や神経変性疾患などの疾患研究を通してmTORの役割が次第に明らかになってきている。この稿では,アストロサイトの癌,オートファジー異常としてのライソゾーム病,異常凝集蛋白質蓄積を発症要因する種々の神経変性疾患を取り上げ,mTORシグナルからの知見を紹介する。さらに,アストロサイトの病態およびこれらの疾患でのオートファジーを介した病態・治療の最近の知見についても触れる。
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