Japanese
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特集 オートファジー
オートファジーの形態学的側面
Morphological aspects of autophagy
山本 章嗣
1
Akitsugu Yamamoto
1
1長浜バイオ大学バイオサイエンス学部
pp.488-494
発行日 2003年12月15日
Published Date 2003/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100791
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夕暮れて淡き輪郭
膜という概念の中に人は生まれき
(永田紅“日輪”より)
「電子顕微鏡の生物学における最大の貢献は“生体膜の発見”である」といっても言い過ぎではないであろう。細胞内には複雑な膜系が縦横無尽に発達し,様々な細胞活動を担っている。細胞の膜系がどのようにして形成されるかという問題は,細胞生物学の中心的課題として現在も精力的に研究されている。その中でも,オートファジーは特別の関心を持って研究されてきた。オートファジーは,細胞内に正体不明の膜構造が現れ,未知の機構で細胞質を隔離して分解するという極めて魅惑的な現象である。細胞にとってオートファジーは重要な機能の一つであり,飢餓によって栄養の供給を外部から断たれても,この機構により自らの一部を分解し生命活動に必要な分子を調達することができる。肝細胞のオートファジーが1962年,AshfordとPorter1)により報告されて以来,電顕形態学によってオートファジーの研究が数多くなされた。その努力の結果,ほとんど全ての真核生物でオートファジーという共通の現象が見られることが明らかになった。オートファジーを行う膜の出現機構についても電顕形態学により数多くの研究がなされて様々な説が提出されたが,いまだ決着はついていない。最近,オートファジーに必須の遺伝子群(APG)が同定され,分子細胞生物学を用いてオートファジーを総合的に解析することが可能となりつつある2)。40年にわたる電顕形態学の知識は,遺伝子を中心とする新しい研究方法と融合することにより,オートファジーの研究の推進に大きな力となると考えられる。
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