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特集 クロマチン
クロマチンサイレンシングと発がん
Chromatin silencing and Tumorigenesis
二宮 裕一
1
,
安田 季道
1
,
菅野 雅元
1
Yu-ichi Ninomiya
1
,
Toshimichi Yasuda
1
,
Masamoto Kanno
1
1広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座免疫学研究室
pp.231-237
発行日 2003年6月15日
Published Date 2003/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100755
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神経系・血球系に限らず,われわれの臓器(細胞系)はたった1個の幹細胞から分化してでき上がる多彩な細胞群である。さらに,個体発生の過程でも,造血系幹細胞はAGMから胎児肝,骨髄と移動しながらこの細胞系を形成している。このような細胞系の発生・分化の制御系はどうなっているのであろうか。さらに,このような制御系の破綻が各種疾患の原因であると考えられる。細胞のがん化においても,様々な多段階発がん機構が提唱されている。まさに正常な細胞の発生・分化と同じように,それぞれのステップごとに様々な因子が関与し,細胞の運命決定・コミットメントと,決定されて後の運命の維持・メモリー機構がはたらいていると考えられる。それらの機構と,クロマチンサイレンシングはどのような関係にあるのだろうか。
クロマチンサイレンシングは,一つの分類の仕方として表1のように6種類に大別できる。表1の中の酵母のmating type lociのサイレンシング以外は,すべて細胞の発がんに関係すると考えられている。これら全てを網羅した話はあまりに膨大になってしまうことや,セントロメア・クロマチン,テロメア・ヘテロクロマチン,X染色体不活化やゲノムインプリンティング,などに関しては本特集号で他の先生方が執筆されているので,そちらを参照されたい。
ここでは,最近注目を集めているポリコーム遺伝子群によるクロマチンサイレンシングと発がんの話に絞って,解説してみたい。
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