特集 がん予防
医療被曝と発がんリスク
島田 義也
1
,
西村 まゆみ
1
,
柿沼 志津子
1
,
今岡 達彦
1
,
高畠 貴志
1
,
藤井 啓輔
2
,
土居 主尚
3
,
神田 玲子
3
,
赤羽 恵一
2
,
吉永 信治
3
1独立行政法人放射線医学総合研究所発達期被曝影響研究グループ
2医療放射線防護研究室
3規制科学総合研究グループ
pp.922-926
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101690
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はじめに
日本は医療被曝大国だと言われる.医師や放射線技師の被曝は,医療従事者の職業被曝という観点で,線量限度が5年間に100ミリシーベルト(mSv)(年平均20mSv)で,どの1年間にも50mSvを超えないよう規制されている.しかし,患者の診断や治療においては,このような規制値が設定されていない.これは,放射線診療や治療による患者の便益が明らかであり,利用を制限することで,診断精度や治療成績が低下したりすることが許されないからである.診断においてX線CT(以下CT)は,1回あたりの放射線の線量も多く検査数も着実に増加している.2005年における年間のCT検査の回数は英国では300万件,米国では6,000万件で,この10年に2~3倍にも増加している.1990年代の調査では,わが国のCTスキャナーの保有台数は世界でも断トツである.CT検査を複数回受けると,線量が100mSvを超えることもしばしばで,将来の健康に不安を持つ患者からの問い合わせも増えている.
そこで,本稿では,主にCTに焦点を当てて,医療に伴う低線量放射線被曝(10~100mSv)の発がんリスクについて紹介し,医療被曝の問題に関する今後の展望について触れることにする.
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