座談会に関連して
F1-ATPaseのステップ回転―ATP駆動の分子機械が働く仕組み
木下 一彦
1
,
足立 健吾
1
,
伊藤 博康
2
Kazuhiko Kinosita
1
,
Kengo Adachi
1
,
Hiroyasu Ito
2
1岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター
2浜松ホトニクス(株)筑波研究所
pp.36-40
発行日 2003年2月15日
Published Date 2003/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100721
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たんぱく質の分子は,たった1個だけでも立派に働くので,分子機械と呼ばれる。例えば,図1に示してあるのは1個の回転モーター分子で,中央上部に突き出ている黒っぽい棒状の部品(サブユニット)が,それを取り囲む六つの灰色の部品の中で回る。われわれの体の中には,この分子モーターがたくさんあり,くるくると回り続けている。原子が縦・横・奥行きそれぞれ数十個並んだ塊がたんぱく質の分子。こんなに小さな分子が,たった1個だけで働くのである。
この回転分子モーターは,F1-ATPaseないしF1(エフワン)と呼ばれている。体内では,回転により,生体内のエネルギー通貨であるATPを化学合成している。回転による化学合成とは,いったいどういう仕掛けなのだろうか。反対方向に回るときには,ATPを分解して,そのエネルギーを使って文字通りモーターとして働くのだが,合成の時と同じ仕掛けを使うのだろうか。
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