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“The history of the earth is recorded in the layers of its crust;The history of all organisms is inscribed in the chromosomes.”この言葉は1946年に故 木原均博士が述べられた有名な言葉であり,50年以上前にすでにゲノムという概念をもって遺伝学研究を進められていた同博士の先見の明は驚嘆に値するものがある。the chromosomeをthe genomeに置き換えればそのまま現在にも通用する。現在ではバクテリアからマウス,ヒトに至るまで数多くの生物種において全ゲノムの塩基配列が決定され,ゲノム情報をもとに生物の進化過程を分子レベルで解析することが可能となった。しかし,膨大なゲノム情報の蓄積にもかかわらず,連鎖する遺伝子群のセットつまり染色体という観点からのゲノム進化研究は,比較染色体地図が作製されている生物種のみに限定され,進化過程における遺伝子連鎖群の保存性の意義については,ほとんど何も明らかにされていない。
最近の分子細胞遺伝学の発展によって,染色体の形態や分染パターンの解析に基づく従来の形態学的な染色体の比較研究の上に,DNAという物質的な裏付けをもって進化過程に生じた染色体の構造変化について研究することが可能となった1-3)。つまり,染色体上の遺伝子や特定のDNA配列の分布を調べることによって,染色体に刻まれた進化の歴史を分子レベルで読みとることができるようになった。本稿では,現在急速な進展を遂げている脊椎動物のゲノム進化研究の中で,まだ未解明な部分の多い鳥類と爬虫類に焦点を当て,筆者らのデータを紹介しながら染色体とゲノム構造という観点から鳥類と爬虫類の系統進化について論じてみたい。
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