Japanese
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特集 分子進化学の現在
脊椎動物の視覚と視物質の分子進化
Vertebrate vision and visual pigment evelution
寺北 明久
1
,
七田 芳則
1
Akihisa Terakita
1
,
Yoshinori Shichida
1
1京都大学大学院理学研究科生物科学専攻生物物理学教室
pp.211-216
発行日 2004年6月15日
Published Date 2004/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100694
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ヒトをはじめとする多くの脊椎動物の網膜には桿体と錐体と呼ばれる二つのタイプの視細胞が存在し,それぞれ薄明視と昼間視(色覚)を司っている。ヒトの場合は,桿体視細胞はロドプシン(桿体視物質)を,3種類の錐体視細胞はそれぞれ赤,緑,青の光を吸収する異なる錐体視物質を含んでおり,色覚の分子的基礎を成している1)。桿体と錐体では,G蛋白質トランスデューシンやcGMP分解酵素(ホスホジエステラーゼ,PDE)を介する基本的によく似た生化学反応により,光信号が細胞の光応答に変換される(図1)。したがって視物質の機能は,さまざまな色の光を受容し,G蛋白質を活性化することであるといえる。これまでに多くの動物から視物質遺伝子がクローニングされ,また,遺伝子およびその変異体を培養細胞系で発現させる研究から,異なる色に反応する錐体視物質の多様化に係わるアミノ酸変異や錐体視物質と桿体視物質の分岐をもたらしたアミノ酸置換などが明らかにされ,脊椎動物視物質の分子進化と視覚との関連が議論されてきた1)。
では,脊椎動物視物質の祖先型はどのようなアミノ酸変異が積み重なり誕生したのであろうか。また,その祖先型視物質の出現はヒトを含めた脊椎動物の視覚の成り立ちとどのような関わりがあるのであろうか。このような疑問を解明するカギを得るために,筆者らは脊椎動物視物質と無脊椎動物視物質や視物質類似色素との機能発現メカニズムについての比較研究を行った。本稿では,最近の筆者らの研究成果を中心に紹介する2,3)。
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