Japanese
English
特集 視覚初期過程の分子機構
視物質の分子生物学
Molecular biology of visual pigments
徳永 史生
1
,
岩佐 達郎
1
Fumio Tokunaga
1
,
Tatsuo Iwasa
1
1東北大学理学部物理学教室
pp.252-260
発行日 1987年8月15日
Published Date 1987/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904995
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1876年Franz Bollの光による視紅の褪色現象の発見1),続く2年間に渡る大生理学者Kühneの見事な実験2)以来,100年の間に視物質の研究は生理学的,生化学的,分光学的,さらには物理学的なあらゆる手法が適用されて進んできた。しかし,タンパク質化学的に比較的容易にアミノ酸配列が決定され,また結晶化されてその立体構造が明らかにされた水溶性タンパク質とは異なり,視物質研究には,膜タンパク質であるがための幾つかの問題が残されていた。その重要な問題の一つはアミノ酸配列(一次構造)が明らかになっていなかったことである。
1970年代後半より,遺伝子操作技術の発達が目ざましく,タンパク質の一次構造はDNAより決定するほうが正確かつ時間がかからなくなった。このようにして得られた一次構造から二次,三次構造までもが推測され,そのモデルを踏まえた実験が行われるようになった。また分子の特定な部位を認識する単クローン抗体作成技術の発達も合わせ,このような研究方法の変化は視物質の研究にも大きな進歩と新しい展望をもたらした。本論ではこのような新しい分子生物学的な方法を用いた視物質の研究について紹介する。
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