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イントロダクション:椎骨と椎式
脊椎動物は脊椎,もしくは脊柱をもつことによって定義された動物群であり,それは脊索動物門の中の一亜門であるとされるが,頭索類(ナメクジウオの仲間)や尾索類(ホヤの仲間)にはみられない独特の形態発生上の特徴(プラコード,神経堤など)をもつという理由から,脊椎動物を動物門の1つとして数えるべきだという見解もある(Irieら15)に要約).つまり,脊柱の歴史は脊椎動物の進化史とともにある34).以前は,ヌタウナギ類注1に椎骨が存在しないことをもって,それを脊椎動物の外群に置いたことがあった(つまり,形式的にそれを無脊椎動物に分類したことがあった)が(Janvier16)ならびにOta & Kuratani30)に要約),今ではヌタウナギ類においても尾部に椎骨要素の残存が現れることが知られている31).
人体解剖学の教えるように,椎骨には多かれ少なかれ部域ごとの形態的分化が認められる.それが最も顕著なのは哺乳類においてであり,頸部の椎骨は頸椎と呼ばれ,それは肋骨を欠き,肋骨をもつ胸部の椎骨は胸椎,続いて再び肋骨を欠く腰椎,仙骨として一体化した仙椎,尾椎が続く.これら各領域の椎骨がいくつあるかについては動物群によって異なり,それを形式的に記したものを「椎式(vertebral fomula)」という.たとえば,ヒトの椎式は「C7+T12+L5+S5+C4=33」と記述される.この椎式の記述を初めて体系的に行ったのは,19世紀英国の解剖学者リチャード・オーウェン(Richard Owen)であり,それが記されたカタログが1853年に出版された『Descriptive Catalogue of the Osteological Series contained in the Museum of the Royal College of Surgeons of England』32)である.
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