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1993年,故・斎藤綱男らは,井原らがアルツハイマー病(AD)脳SDS不溶性画分中から解読した新規アミノ酸配列NACをもとに,アミノ酸140個からなる新規蛋白をコードする遺伝子をクローニングし,NACP(NAC precursor)と命名した。一方Goedertらは,AD脳に蓄積するPHFを認識するモノクローナル抗体が交差反応するアミノ酸140個ならびに134個からなる蛋白を同定した。これらの蛋白は,1988年Schellerらによりシビレエイの発電器官やラット脳のシナプス前末端に見出されていたシヌクレイン(シナプスと核を染色することからsynucleinと命名されたが,現在核への局在は疑問視されている)と相同性が高いことから,Goedertらはそれぞれα-シヌクレイン,β-シヌクレインと命名した。NACPはα-シヌクレインと同一の蛋白であることが判明し,以後α-シヌクレインと呼称されるようになった。最近になり,乳癌,後根神経節などから第3のシヌクレインファミリー分子としてγ-シヌクレインが見出されている(図1)。
1997年,Polymeropoulosらは常染色体優性遺伝を示すイタリアおよびギリシャの家族性パーキンソン病(PD)家系において第4番染色体長腕に位置するα-シヌクレイン遺伝子の点突然変異を証明した1)。この変異は,α-シヌクレインの第53番のアラニンをスレオニンに置換し(A53T),患者はやや若年でPDを発症する。さらに家族性PDに連鎖したA30P,E46K変異やα-シヌクレイン遺伝子のtriplication2)も報告され,α-シヌクレインの家族性PD原因遺伝子としての意義付けが確立された。
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